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旅とホテルのミニコラム:日常に旅の余韻とヒントを。
泊まったことはない常宿について。|成田峻平
2025.10.15
No.061

記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、『RiCE』副編集長の成田峻平による、お気に入りのホテルについて。

食の雑誌編集という仕事柄、出張して普段行かないエリアを訪ねると、取材先に教えてもらった酒場やバー、スナックなどをハシゴするのが習慣になっている。結構深い時間、調子に乗って翌日の仕事にギリギリ響くくらいまで行くので宿のグレードはさほど気にならない。朦朧とした意識の中でベッドに潜り込んで気がついたら朝が来ていて、そそくさと準備を済ませ退散するだけ。もしいいホテルに泊まってもなんだか勿体無いので、専ら泊まるのはビジネスホテルである……。そんなことを書き連ねようと思ったが、このサイトの趣旨から逸れた色気ゼロな内容になるので、今回は「泊まったことはないけれど好きなホテル」について書いてみたい。


身の丈に合わないと思われるかもしれないが、一番頻繁に行っているホテルが神谷町のオークラである。これにはきちんと理由があり、自分の「土日休みのお気に入り仕事スポット」がここから近所、歩いて5分くらいの[スターバックスコーヒーワールドゲート店]なのだ。


オフィス街にあるカフェの、休日の空気が好きだ。チェーン店で構わない。基本的に平日ビジネスマンをターゲットにしているから土日はがらんとしている。場所柄海外の人もちらほらとおり、きっと外資系のコンサルとかなのだろう、駐在員っぽい人がコーヒー片手にPC開いて作業をしていたりする。その場で仕事をしていると自分もビジネスエリートになったような錯覚を抱く。汗水流しながら残業している現実が一瞬フィクションになる。

9月のある日曜日、12時ちょうどでこのかんじ。とても快適である。

自宅から日比谷線で一本なのでアクセスも良く、頻繁に利用、というか愛用させてもらっている。そんな休日といえどもワーカホリックな状態を強いられる時、仕事が煮詰まるとオークラへと足を伸ばす。何をしに行くのかというと、まぁなんてことはない。シンプルにロビーでまったり過ごすのだ。


言うまでもなく建物が圧倒的に素晴らしい。日本的モダニズムの象徴と言うべき伝統を受け継ぎながらも、世界水準の快適性とラグジュアリーさが搭載された迎賓空間にフリーライドする。


天井が高い空間はそれだけで心が落ち着くし、そこから吊り下げられたアイコニックな照明「オークラ・ランターン」から発されるやわらかい光をたっぷりと浴びながら、梅の花を模した椅子に座れば贅沢な気持ちになる。高い家賃に耐えながら都心に住むメリットは、こうした文化を享受できることに尽きるだろう。

エントランス正面にある大花生け鉢にも毎度心を奪われる。大胆でありながらも精緻、季節を存分に感じるうつくしい仕事に直面すると、「私もそんな鮮度高いネタを扱ういい雑誌を作らねば」そんな心持ちになってくる。少しだけ背筋を正しつつもマイペースで時間を過ごしていると、オーバーヒート気味の仕事脳が適度に休まっている。こっそりwifiを拝借し仕事をさせてもらう。これが結構はかどるのだ。ということで宿泊こそしないものの、一番よくいく私の“常宿”はオークラです。

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成田峻平
成田峻平
『RiCE』副編集長
1997年宮城県仙台市生まれ。Media Surf Communicationsを経て、ライスプレス入社。
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