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旅とホテルのミニコラム:日常に旅の余韻とヒントを。
壊れた米|かまがみまほ
2025.11.28
No.081

記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、コピーライター / ライターのかまがみまほによる、旅の一皿について。

食にそこまで強い関心があるわけではないのだが、たまに「気がついたらずっと食べていた」みたいな旅があり、最近だと友人と訪れたホーチミンがそうだった。食べたものすべてが今でも恋しいくらいだが、なかでも忘れられないのが「コムタム」。 「壊れた米」という意味で、精米の過程で砕けてしまったお米とおかずを一緒に食べるワンプレート料理。ベトナム戦争後の食糧不足をしのぐために生まれ、今ではストリートフードとして親しまれているのだとか。


私たちが訪れたコムタム屋さんも、文字通り、道のど真ん中にあった。もちろん店前に並ぶ列などはなく、慣れた現地の方々に負けじと注文しなければ、コムタムにはありつけない。自分でメインの具材を選べるシステムだったが、ベトナム語がさっぱりなので笑顔と指差しで乗り切る。たまに現地の言葉しか通じない場所や、自分と常識が大きく異なる場所に行くと、大きな世界にポツンと迷い込んだ子どもみたいな気持ちになる。でもその特有の孤独感が、結構好きだったりする。


道端の空いている椅子に座って待っていると、流れ作業のようにコムタムが運ばれてきた。やはり注文したものとは違う具材がのっていたが、まあそこはご愛嬌。テーブルにピッチャーで置かれているソースをかけて、早速パクリ......。うんまっ! 砕けたお米があまじょっぱいソースとよく絡む! 予想を超えたその味に、思わず友人と目を合わせる。こんなに美味しいものにも出会えるんだから、これからもどんどん、世界の迷子になっていきたい。そう思わせてくれるような、一皿だった(ちなみに翌朝、少しお腹を壊したが、正直その価値さえあったと思う)。

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かまがみまほ
かまがみまほ
コピーライター / ライター
1998年生まれ、北海道出身。イギリスの大学で観光学を学んだが、現在は日本語のコピーライター / ライターとして、言葉を考えること全般を生業とする。
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