記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、ume,yamazoeオーナーの梅守志歩による、旅のお供について。
旅とホテルのミニコラム:ほぼ365日更新中!
「旅をする木」を鞄の中に|梅守志歩
2025.08.18
No.024

星野道夫さんの「旅をする木」という本が大好きで、10年以上前から旅の時は必ずお供をしてくれている。
アラスカの大自然を撮り続けた写真家の本なのに、写真が一枚もない本だ。何千万年もの時を重ねた氷河や地層の連なりを見て、人間が生きている時間軸では背景や理由が計りえないからこそ、想像力を尽くした思いやりと愛の詰まった文章はとても優しい。
写真がないからこそ、見たことのない世界に想像の力で飛んでいき、愛ある言葉たちをあびていると、氷河の雪解け水のように、ぽつんぽつんと純粋な、透明で美しい水滴が私の心に染み渡る。
旅は、物理的に距離を移すことで、「いつもの私」の抜け殻を日常において、純粋な自分、優しい自分になることのできる行為だと思っている。
いつもと違う場所で、純粋な言葉のシャワーをあびること。場所は移っても、地続きに続く時間の中で、「いつも」も優しく愛ある自分でいたいと願い、今日も鞄と心にこの本をしまう。


梅守志歩
ume,yamazoeオーナー
2010年に大学を卒業後、大手IT広告会社の営業職を経て、家業の寿司製造メーカーである梅守本店へ戻る。 2016年9月に山添村へ移住。 寿司の営業の傍ら、旅行会社向け田舎体験ツアーの企画・販売を行う。 2020年3月、山添村に宿泊施設「ume,yamazoe」をオープン。
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