somewhere
365days_logo
旅とホテルのミニコラム:日常に旅の余韻とヒントを。
慶良間諸島の海深くへ |脇田あすか
2025.10.23
No.065

記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、グラフィックデザイナー/アートディレクターの脇田あすかによる、旅先での過ごし方について。

趣味はなんですかと尋ねられたら、ダイビングです!と答えている。年に一、二度という頻度の低さで胸を張りづらいけれど、海に行かなければならないという性質上、東京に住んでいる自分には仕方のないこと。というわけで、毎年、海温が暖かくなって、潜っていても寒くて辛くない(海中って本当に冷えるのです)季節がやってくるたび、那覇へ訪れている。石垣島や海外へ潜りに行くこともあるけど、空港から市内へのアクセスの良さ・海の綺麗さ・ご飯のおいしさどれをとっても、仕事の合間を縫って気軽に行くのにありがたくて、結局同じコースを繰り返している。


慶良間諸島は、抜群の透明度、美しい珊瑚礁に豊かな魚群、海亀たちによく会えるという素晴らしいダイビングスポットだ。ただ、それなりに那覇から遠く、船で2時間ほどかかる。もう50本以上潜ってるのに未だうっすら船酔いするので、胃腸体調のコンディションをしっかり整えなければならない。朝6時に起きて身支度をし適度に腹を満たし、送迎車にのって港へ向かう。船の上には酸素タンクなどの機材が転がっていて、全てがうっすら磯臭い。船の上はゴォゴォとすごい音でちっともお喋りできるような環境じゃないので、どんどん街が小さく遠ざかってゆくのをみんなで黙って眺めてる。

海の中は、自分が知ってる限りで最も非日常の世界。水中は左右前後だけでなく、上下があるので、世界が立体的。自分の上にいる人とぶつかる、という陸ではありえない感覚が面白い。下が見えないような深い崖の側面を、見渡す限り遠くまで真っ白な砂浜を、おびただしい数の魚群の中を、美しい珊瑚礁の上を、泳ぐ。この世界にはこんな鮮やかな景色があるのかと、感動する。


午前中に2本、お昼ご飯をはさんで午後に1本潜って、港へ帰る。陸に上がると、そこはあまりに日常で、さっきまで見ていたものは夢だったのかなあとぼんやり思う。こうして日々を過ごしてる間にも、海の中にはあの美しい世界が存在しているんだなと思うと、地球よ、ありがとう、と言葉が出る。思い出すとすぐにでもまた行きたくなる。この人生で、こんなに良い趣味と出会えて良かった。

share on
脇田あすか
脇田あすか
グラフィックデザイナー/アートディレクター
1993年生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業後大学院を修了、その後コズフィッシュを経て独立。あらゆる文化に対してデザインで携わりながら、豊かな生活をおくることにつとめる。プライベートワークとしてアートブックやスカーフなどの作品を制作・発表もしている。
パリのごはん |脇田あすか
脇田あすか
グラフィックデザイナー/アートディレクター
繭の中でねむる |脇田あすか
脇田あすか
グラフィックデザイナー/アートディレクター
コラム一覧をみる