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旅とホテルのミニコラム:日常に旅の余韻とヒントを。
繭の中でねむる |脇田あすか
2025.10.22
No.064

記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、グラフィックデザイナー/アートディレクターの脇田あすかによる、忘れられないホテルでの体験について。

九月はまだまだ暑い。階段を登る背中に熱い日差しが降り注ぎ、汗が止まらなくなる。振り返ると後ろには瀬戸内海。LOGは、尾道の山の上にある。


スタジオ・ムンバイがてがけたという空間は、どこを切り取っても絵の中のような美しさでうっとりするけれど、その美しさは緊張する類のものではない。ざらりとした土壁の風合いやその絶妙な色味、踊り場のベンチ、野生味あふれる中庭。どこか懐かしい気持ちになるのは、昭和に建てられたアパートをそのまま生かしたつくりだからだろうか。

泊まる部屋に案内していただき、扉をあけて、息を呑んだ。白い和紙で部屋全体が包まれて、ぼんやりと淡く発光している。子どものころ、ふざけてシーツやカーテンにくるまって、太陽を透かして遊んだのを思い出す。部屋自体が光をまとっているように感じて、その神聖さに少しだけ緊張しながら入る。

夜、ダイニングで美味しいご飯をいただき、寝室で時を過ごすうちに、部屋と私が交わってくのを感じた。ひと呼吸ごとに、だんだんと自分がうつくしいものになっていく気がする。緊張していたのはどこへやら、布団に入るころにはすっかり安心して、淡い光の中に包まれてぐっすりと眠った。

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脇田あすか
脇田あすか
グラフィックデザイナー/アートディレクター
1993年生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業後大学院を修了、その後コズフィッシュを経て独立。あらゆる文化に対してデザインで携わりながら、豊かな生活をおくることにつとめる。プライベートワークとしてアートブックやスカーフなどの作品を制作・発表もしている。
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