記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、Sleepy Tofu 日本事業責任者の施清元による、定番とは一味違う旅の楽しみ方について。
旅とホテルのミニコラム:ほぼ365日更新中!
溶けていく|施清元
2025.08.06
No.014

無意識のうちに、旅に公衆浴場や野湯を組み込んでしまう。
南国出身で、子供の頃からシャワーが主流で風呂に浸かる習慣はなかったが、留日後すぐに、裸で向き合うことで生まれる開放感と、何でも話せる雰囲気を実感した。羅臼の熊の湯で漁師から昔のアザラシ猟の武勇伝を聞いたり、青森奥薬研のかっぱの湯では、緑豊かな渓谷を望む外気浴の中で友人に悩みを打ち明けたり、旅の中で欠かせない時間となった。




野湯へ向かう道のりだけで、あまりの美しさに足を止めたくなることもあれば、 更衣室を自分の家のようにくつろげる番台にも出会う

最も印象深く、そして最も熱かったのは、恐山の薬師の湯だった。その時、家族が病気で心を痛めていたが、霊場を巡礼し、46.5度の湯船で、見知らぬバイク乗りと軽く言葉を交わし、互いに「頑張って」と励まし合った後、特に意味のある会話とは言えなかったものの、心の中の頑固で硬いかたまりが、古い垢と一緒に溶けていくような感覚を覚えた。
施清元
Sleepy Tofu 日本事業責任者
医学部卒業後、一枚のCDジャケットに魅せられ、デザインの道へ。現在は寝具ブランド「Sleepy Tofu」の日本事業責任者を務める。出張の合間には各地の居酒屋巡りを楽しみ、老舗居酒屋の著書がある。
心ほどける温泉宿
銭湯や野湯に浸かってくつろげる飾らないホテル