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旅とホテルのミニコラム:ほぼ365日更新中!
仮面と兄弟|山田貴仁
2025.09.04
No.039

記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、建築家でstudio anettai代表の山田貴仁による、思い出に残る旅の土産について。

旅先では、そこで出会った人がつくったものやその人に関係するものを、つい買ってしまう。有名な民芸品とか、国名のロゴ入りTシャツよりも、「これなに?」って聞かれそうなやつがいい。ひと目じゃよくわからなくて、それをきっかけに話がはじまるようなものが理想的だ。


スリランカで買ったこの仮面もそんな感じだ。写真に写っている2人の兄弟がつくったもの。近くに工房があって、仮面に限らず、毎朝いろんな工芸品を手作りして店頭に並べているらしい。その話を聞いて、なんだか急に距離が縮まった気がして、気づいたら2つも買っていた。


店頭に並ぶ様々な仮面は当時の王を模したものらしいが、全てやたらと細長い。聞けば、昔のスリランカでは木材の調達に制限があって、細い木しか使えなかったそうだ。その制約の中で、自然とこういう形に進化していったという。文化と歴史が合わさってできた、少しいびつで愛らしいフォルムに惚れ込み、今もオフィスに飾っている(スタッフのみんなからも「なんだか不気味」「見られている気がする」と評判だ)。


僕にとってお土産は、あとで活用したり人にあげたりするよりも、そのときの空気を思い出せるかどうか大事なのかもしれない。その時の気配や会話をもう一度引き出してくれるかどうか。忘れっぽい自分のために、我が家へ持ち帰っている。

オフィスに飾られた仮面。樹種の径が、異様に細長い形状に現れる

購入した2つの仮面と製作者の兄弟。右は筆者

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山田貴仁
山田貴仁
studio anettai代表
ベトナム・ホーチミンにて2019年にstudio anettai設立。主な作品に、〈House in Ba Ria Vung Tau〉など。建築設計のほか、建築3Dパース、アーバンリサーチやプロダクトデザインなど、建築設計領域に留まらずに活動中。
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