記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、REPORT SASEBO 理事・大丸勇気による、定番とは一味違う”B面の旅”について。

旅路を決定づけるもの、それは時に、特定の「場所」への漠然とした引力、かもしれません。ソウルにおいてその引力が向かう先は他ならぬ「明洞聖堂の地下に広がる複合空間、そしてその一角に佇む『RE:CODE』」です。2010年頃から始まった私の定点観測的な韓国旅では必ず訪れる場所です。
ソウルの喧騒から一歩、荘厳な明洞聖堂を見上げたその時、多くの方がその神聖さに心を奪われることでしょう。しかし、私の好奇心は、その「地下」へと誘われたのです。信仰の丘の下潜む様に広がる空間に配された、カフェ、書店、ギャラリー、そしてそのネーミングに垂涎せざるをえなかった「RE:CODE」。都市の賑わいと聖なる静寂が交錯する、そんな不可思議な魅力に感慨を禁じえませんでした。廃棄される素材から、新たな命を吹き込まれた品々が、「これは終わりではない、新たな始まりもあるのかもしれない」と、静かに語りかけてくるようでもありました。
この「RE:CODE」、漢南洞の丘の麓に佇む、もう一つの店舗もまた、私の偏愛スポットの一つです。そちらは、建築写真の専門サイトでも紹介されるほどのデザイン性。明洞の地下が秘めたる「再生の思想」を体現するならば、漢南洞は、それをより洗練された形で提示されています。それぞれ異なる表情を持ちながらも、根底に流れる「無駄を愛し、価値を再定義する」という哲学は共通しています。
旅とは発見でもありますが、きっと「再生」でもあるかもしれない、とは言わずもがなで、昨今のリトリートの潮流のその先に想いを馳せるのです。次なるソウルの地を踏む日、きっと私はまた、あの二つの場所へと導かれるに違いない、と、そう漠然と予感しています。この場所たちが、どうかこれからも、静かに、そこに存在し続けてくれたら、と願ってやみません。

聖なる場所の地下に広がる複合空間。その一角に、この静謐な『RE:CODE』は息づいています。書架と、静かに並べられた再生の産物たち。ここへ来ると、時間の流れが、少しばかり穏やかになるような気がしたものです。

明洞聖堂の地下深くに、こんなメッセージが潜んでいる、というのも、何かの皮肉でしょうか。「これはただのファッションではない」。この言葉に、私の旅の視点は、ひっそりと、しかし確実に変わった、のかもしれません。

壮麗な明洞聖堂。しかし、私の心を捉えて離さないのは、その地下に隠された、もう一つの「聖域」でした。信仰の光と、モノの再生を静かに願う場所。ソウルの奥深さは、こんなコントラストの中にこそあるのかもしれません。

このレンガ造りの通路が、信仰の場から、別の世界へと誘う入口、とでも言うべきでしょうか。天井からこぼれる光が、旅の道標、とまでは言いませんが、心を落ち着かせてくれるような、そんな存在だった、のかもしれません。この先に、あの偏愛の空間が待っているのです。
