somewhere
365days_logo
旅とホテルのミニコラム:日常に旅の余韻とヒントを。
それが『あたわり』だと知れたこと |ヤブタコウヘイ
2025.09.09
No.043

記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、株式会社水星 ホテル事業部のヤブタコウヘイによる、忘れられないホテルについて。

人生で20泊もした宿は後にも先にも近江町市場近くにあるLINNAS Kanazawaだけだ。デンマーク語で『HYGGE(ヒュッゲ)』という『満ち足りた』であったり『居心地の良い』という意味の言葉をコンセプトとするホテル。そのコンセプトには『あなたの旅が、そして旅のあとの日常も、もっと豊かになるように』との素敵な願いが込められている。実際にスタッフやゲストの方々と触れ合い、コンセプト通り居心地の良い日々を送っていた中で、私は金沢の「ある言葉」と出会った。

 
 

2階ラウンジスペースの本棚に金沢の方言についての書籍が置かれていることに気付き、手に取ると『あたわり』という言葉が綴られていた。石川県で方言として使われる『天から与えられたもの』という意味の言葉らしい。それも天賦の才や、生まれつきの性質だけでなく運命や宿命のような自分の置かれた境遇や役割など様々な意味でも使われる広義の方言だそうだ。また自然環境や過疎化が厳しい能登地方では、困難な状況も『あたわり』なのだという。つまり乗り越えるべき壁でさえ、自分の成長のために与えられた物であるという発想が包含されている。



『あたわり』という言葉に出会えたこと

それが『あたわり』だと知れたこと



心の中にずっと飾っておきたい素敵な言葉だと思った。そして同時にこの言葉に出会えた自分の運命にも『あたわり』を感じ、またLINNAS Kanazawaという素敵な空間に宿っている言葉だとも思い至る。石川の外の人間ではあるけれど、この言葉をたくさんの人に伝えていきたい。

share on
ヤブタコウヘイ
ヤブタコウヘイ
株式会社水星 ホテル事業部
京都生まれ、京都在住。HOTEL SHE, や香林居でホテリエとして働く傍ら、podcast『水星移住計画』の配信や4コマ漫画『ホテルシー京都の日報』を連載中。趣味はイラストと短歌制作。
旅が終われば忘れゆく朝 |ヤブタコウヘイ
ヤブタコウヘイ
株式会社水星 ホテル事業部
夢の“ナシカンダー” |伊藤紺
伊藤紺
歌人
コラム一覧をみる