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旅とホテルのミニコラム:日常に旅の余韻とヒントを。
旅が終われば忘れゆく朝 |ヤブタコウヘイ
2025.09.10
No.044

記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、株式会社水星 ホテル事業部のヤブタコウヘイによる、思い出に残るホテルでの景色について。

金沢の夏の朝に降る雨はきらきらしている。


金沢の中心地、香林坊に佇むスモールラグジュアリーホテル『香林居』に早朝6時に出勤すると、静かな2階ラウンジの大きな窓から人通りの少ないいしかわ四高記念公園を眺めることができる。


短い時間だけ強く降ったらしい雨が止んだことで、雨粒を抱えた木々がいつもと違う表情を見せてくれる。雨が止み、早めの休憩時間に外に出て公園を散歩すると今度は雨が夏の暑さで蒸発し、木々や葉、土の匂いと共に立ち昇っていくように感じる。自然にも匂いがあるなんて当たり前のことを思い出す。


子供の頃、自然に触れることのできる土地で育ったので覚えのある匂いだったのに、大人になってからずっと忘れていた。匂いや空気感とは、その土地を離れれば忘れてしまうものでもある気がする。決して写真に収めることのできない思い出。しかしそれは同時に、その土地に戻ってくれば何度でも再会できるものだとも言える。



薫り立つ驟雨のあとの夏木立

旅が終われば忘れゆく朝



忘れてしまうと理解しながら楽しむのも旅の情緒のひとつ、という気付きを胸に、今日もゲストを雨上がりの輝きの先へ見送っていく。

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ヤブタコウヘイ
ヤブタコウヘイ
株式会社水星 ホテル事業部
京都生まれ、京都在住。HOTEL SHE, や香林居でホテリエとして働く傍ら、podcast『水星移住計画』の配信や4コマ漫画『ホテルシー京都の日報』を連載中。趣味はイラストと短歌制作。
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