記憶に残るホテルや、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、株式会社水星 経営企画室の金井塚悠生による、記憶に残る旅先での体験について。
旅とホテルのミニコラム:日常に旅の余韻とヒントを。
人生に絶景が必要な時 | 金井塚悠生
2025.08.03
No.011

ずっと、絶景なんてしょうもないと思っていた。景色を見て何が楽しいねん、と。そんなひねくれた自分にも忘れられない景色がある。青森県八戸市鮫町にある蕪島神社。約700年程昔から、商売繁盛や漁業安全の神様として地元の人々に愛されてきたこの神社は、ウミネコ繁殖地として国の天然記念物に指定されている。ウミネコは毎年春に島に飛来して、産卵、雛が巣立つ夏には島を去る。そのため、春から夏にかけては、神社のまわりは、一面の空と大地を覆いつくすほどのウミネコの群れを見ることができる。
八戸の市街地から海沿いを走る電車(通称JRうみねこ線)に乗り、鮫という港町の小さな駅で降りる。看板に沿って、長閑な道を半信半疑な思いで歩く。メディアに載ってる絶景はだいたい誇張されているもんなので油断は禁物である。海岸に出ると港に停泊する船の合間に蕪島神社が見えてくる。神社に近づくにつれて、ウミネコのなき声が大きくなってくる。写真では伝わりづらいが、5月に訪れた時、神社のまわりは、無数のウミネコが乱れ飛んでいた。きっと絶景に魅せられた多くの人間がそうであるように、しばし、立ち尽くし、空を飛び交うウミネコの群れを眺めていた。まばゆい春の光の中ですべての命が輝いていた。
数年後、宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」の中で、空を無数の鳥が飛び交うシーンを見た際に、ふと、蕪嶋神社の光景を思い出した。この世のものとは思えないアニメーションならではの幻想的シーンだけど、自分はこの光景を知っている。






金井塚悠生
株式会社水星 経営企画室
過去にOSAKA BAY DIARY、佐世保 西果漂流記などのメディア制作を担当。ライターとして、NEUT Magazine、TOKYO VOICE、SUUMO タウン、じゃらんなどで執筆。
あえて、THE・絶景ホテル
夢みたいな風景を見に。


