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旅とホテルのミニコラム:日常に旅の余韻とヒントを。
海の京都/温泉銭湯と野菜直売所と自炊|生物群
2025.12.11
No.086

記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、医師/インターネットユーザーの生物群による、旅先での過ごし方について。

海の京都と呼ばれる丹後半島に10日間滞在した旅行をした。京都と言えば世界遺産である古都京都の文化財、洛中の寺社仏閣や市街の街並み・文化を思う人が多いだろうが、私にとっての思い入れのある京都は、長いこと日本海に飛び出した京都市街地からも遠い遠い丹後半島だった。観光資源としては伊根町につらなる舟屋の風景や、美しい天橋立の景勝が有名である。親族が長く丹後半島で暮らしていて、自分のルーツと言える場所だ。


のんびりしたいと思ったある夏に、親族で所有していた海の近くの別荘を拠点に、友人と二人で自動車で毎日あちこちを回った。天橋立や伊根の舟屋以外のいわゆる観光らしいスポットでないところで大変心を惹かれるのは、地元でとれた農作物が並ぶ直売所、それから日帰り温泉施設だった。


毎日新鮮な野菜や卵、魚介を買ってはキッチンで簡単に調理して食べる。トマトを切って冷やすだけ。豆腐に刻んだ茗荷をのせるだけ。イカを捌いてさっと茹でてレモンをしぼるだけ。暗くなる前に温泉施設に立ち寄って、地元の人にまじって海水まじりの塩気のある気持ちのいい湯につかる。


峰山町でワインを買っておき、別荘から浜辺まで歩いて行って海に足をつけながら飲む。酒蔵や醤油蔵に立ち寄り、地元の日本酒や醤油を買う。スーパーで地物の刺身を買い、地元の醤油をつけて食べる。特産品である青魚の塩糠漬け「へしこ」も買って夜に虫の鳴く声を聞きながらちびちびと食べる。


山村にある、細い農道でしか行くことができない「弥栄窯」のカンパーニュ・ビオを買いに行き、帰りの車内は幸福なイーストの香りで満ちた。


この10日間の旅を経て、地方に行ったときには直売所と温泉銭湯に立ち寄ることが習慣になった。銭湯に浸かっていると、その土地の人がその土地の言葉でその土地の話をしている。壮大な話は決してしていない。違う土地の人々の、身近な生活への親しみある暮らし。その土地で暮らすことがなくても、自分の毎日の暮らしと地続きの生活を求めている旅行があった。

峰山町のYOiNEで購入したナチュラルワイン。現在お店はお隣の京丹後市大宮に移転

京丹後市丹後町久僧海水浴場付近の夕景。田んぼの中を通って浜辺まで歩く

ときどきビリヤニを作ることもある

直売所で売っていた新鮮な野菜をただ切って焼いたり、豆腐に薬味を盛って食べたりするだけで楽しい

海なので新鮮な刺身がスーパーで手に入る。珍しいトビウオのフライ。久美浜にある玉川木下酒造で買ったアイスブレイカー純米吟醸

海の見える温泉銭湯の休憩室

弥栄窯に受け取りに行ったカンパーニュ・ビオとブリオッシュ・ベイザンヌ(農家のブリオッシュ)

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東京都に住み、働いている内科医。「川沿い」というPodcastでどこかへ行った話をしています。 X:@kmngr Bluesky:@kmngr note:https://note.com/kmngr 川沿い:https://kawazoi.space/
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