記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、ume,yamazoeオーナーの梅守志歩による、帰りたくなる宿について。
旅とホテルのミニコラム:ほぼ365日更新中!
なにもないから、何度も行きたい|梅守志歩
2025.08.16
No.022

石川県珠洲市、私の住む奈良県からは、片道6時間の場所にある「湯宿 さか本」。
その宿には、スタッフのおもてなしも、十分な冷暖房も、アメニティも、本当になんにもなく、もちろん電波も入らない完全圏外。Wi-Fiもない。
17時ごろ到着すると玄関も廊下も電気は消えていて、人の気配もなく、初めて訪れたときは「予約が取れていないのでは…」ととっても不安になったのを覚えている。
ただそこには、とってもシンプルな説明なのに、言葉がなくても手が尽くされたことが滲み出ているお料理や、自分を反射するほどに磨かれた床に、さりげなく添えられた花々がある。
「情報を食べている」なんてことを言われることも多くなったレストランや、コンセプトを上手に伝えようと手数を重ねたサービスが増える中で、この宿の存在が、私の目指す先を強く光らせて教えてくれる。
「至らない、尽くせない」と言いながらも、端々から滲み出る姿勢や間合いが、本当に愛され続いていく場所とはなにかを教えてくれているように思う。








梅守志歩
ume,yamazoeオーナー
2010年に大学を卒業後、大手IT広告会社の営業職を経て、家業の寿司製造メーカーである梅守本店へ戻る。 2016年9月に山添村へ移住。 寿司の営業の傍ら、旅行会社向け田舎体験ツアーの企画・販売を行う。 2020年3月、山添村に宿泊施設「ume,yamazoe」をオープン。
飾らないから魅力ある宿
何もない、飾り気がない、だからこそ行きたくなる宿