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旅とホテルのミニコラム:ほぼ365日更新中!
パーフェクトホテル「豊島ゲストハウスmamma」 | 金井塚悠生
2025.08.02
No.010

記憶に残るホテルや、旅先での体験、お土産、忘れられない味などなど・・・。旅にまつわるさまざまな思い出をほぼ毎日更新。本日は、株式会社水星 経営企画室の金井塚悠生による、忘れられないホテルについて。

これまでの人生の中で、完璧な宿泊体験だったと思えるホテルがある。そのホテルは決して、高級ではなく、便利でもなく、サービスが行き届いているわけでもない。そして、二度と泊まることはできない。


豊島ゲストハウスmammaに宿泊したのは、2018年の夏だった。豊島は、直島と並び、瀬戸内国際芸術祭の舞台となるアートの島として有名な観光地。以前にも何度か訪れたことがあったが、一度島に泊まってみたいと思い、たどり着いたのがこのホテルだった。mammaは、元々乳児院だった建物をリノベーションしてつくられていて、館内には当時の名残を感じさせるものが点在していた。また、ライブラリーには直島や豊島の歴史についての本が複数あって、そこではじめて、アートの島として有名になる前、豊島がごみの島として30年以上不法投棄に苦しんでいた歴史があることを知った。


歴史を学びに来たわけではない。実際のところ、滞在時間の大半は、意外と広い館内の探検や、モダンなお風呂、カウンターキッチンでの談笑などを気楽に楽しんでいた。そんなありきたりな時間の合間に、かつてこの建物から巣立っていった子どもたちのことや、故郷の自然を取り戻すために闘っていた人たちのことに思いをはせた。たった一晩の中で、たくさんの「声」を聞いた気がする。夜になると完全な闇にのみ込まれる島の中で、mammaの館内はずっと暖かい光に満ちていた。


今でも時々豊島に遊びにいくことがある。島の玄関口である家浦港から、豊島美術館に向かう途中の道を走る時、かつて、乳児院で、ホテルだった建物が緑の中にひっそりと佇んでいるのが見える。「あそこ、昔ホテルだったんだよ」「え、そうなん?」たぶん、これからも何度でも、そんな話をすることになるのだろう。

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金井塚悠生
金井塚悠生
株式会社水星 経営企画室
過去にOSAKA BAY DIARY、佐世保 西果漂流記などのメディア制作を担当。ライターとして、NEUT Magazine、TOKYO VOICE、SUUMO タウン、じゃらんなどで執筆。
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